世田谷の実家を、どう遺すか。遺言書の3つの形と、法務局に預ける制度
遺言書が要るかどうかは、財産の多さではなく「分けにくいものが混じっているか」で決まります。自筆・公正証書・秘密証書の違いと、2020年7月10日に始まった法務局の保管制度、そして書くときにいちばん間違えやすいところを整理しました。

世田谷でご相続のご相談をいただくとき、遺産のほとんどが「実家の土地と建物ひとつ」ということが珍しくありません。区内の住宅地は路線価が高く、預貯金と合わせても不動産が全体の大半を占めます。
現金なら3人で等分できますが、家は3つに割れません。 遺言書が要るかどうかは、財産の多さより「分けにくいものが混じっているか」で決まります。
ここでは遺言書の3つの形と、2020年7月10日に始まった法務局の保管制度を整理します。
遺言書には3つの形がある
自筆証書遺言
遺言者が全文・日付・氏名を自分で書き、押印します(民法968条1項)。費用がかからず、思い立った日に書けるのが利点です。
かつては財産目録まで手書きする必要がありましたが、2019年1月13日施行の改正民法で、目録についてはパソコンでの作成や通帳のコピーの添付が認められました(同条2項)。ただし目録の全ページに署名と押印が要ります。
気をつけたいのは、形式を外すと無効になることです。日付を「令和○年3月吉日」と書いた遺言は、日が特定できないため無効と判断された例があります。
公正証書遺言
公証人に作成してもらう形です(民法969条)。証人2人の立会いが必要で、財産の価額に応じた手数料がかかります。原本が公証役場に残るため、紛失や書き換えの心配がありません。
判断能力に不安が出はじめている場合や、相続人の間で意見が割れそうな場合は、公証人が関与するこの形が選ばれることが多いようです。最寄りの公証役場は日本公証人連合会のサイトで調べられます。
秘密証書遺言
内容を伏せたまま、存在だけを公証人に証明してもらう形です(民法970条)。手続きが煩雑なわりに形式不備のリスクが残るため、実際に使われることはほとんどありません。
法務局に預ける制度(2020年7月10日開始)
自筆証書遺言の弱点は「見つけてもらえない」「捨てられてしまう」ことでした。これに対して、法務局が遺言書の原本を預かる制度が「法務局における遺言書の保管等に関する法律」により2020年7月10日から始まっています。
- 手数料は遺言書1通につき3,900円
- 法務局の職員が形式(日付・署名・押印など)を確認する
- 相続が起きたあと、家庭裁判所の検認が要らない(同法11条)
検認は、自筆の遺言書を開けるときに家庭裁判所で行う手続きです(民法1004条1項)。相続人全員に呼び出しがかかり、数週間から数か月かかります。この手続きを省けることが、この制度のいちばん大きな利点だと考えています。
ただし法務局が見るのは形式までで、内容の適否までは確かめません。 形式が整っていても、遺留分を割り込む内容や、あとで解釈の割れる書き方は、そのまま預かられます。
書くときに、いちばん間違えやすいところ
不動産の書き方
「世田谷の家」「自宅」では特定できません。登記事項証明書のとおりに、土地は所在・地番・地目・地積を、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積を書き写します。
見落としやすいのが、地番は住居表示(郵便物の宛先)とは別の番号だということです。世田谷区は住居表示が実施されている地域が広く、「世田谷区○○一丁目2番3号」と書いても登記上の土地は指せません。登記事項証明書は法務局の窓口またはオンラインで取得できます。
遺留分
兄弟姉妹以外の相続人には、最低限保障される取り分があります(民法1042条)。これを割り込む遺言も無効にはなりませんが、割り込まれた側は金銭の支払いを請求できます(遺留分侵害額請求、民法1046条。2019年7月1日施行の改正で、金銭での精算に一本化されました)。
世田谷の実家のように不動産の評価が大きいと、「長男に自宅、次男に預貯金」と書いたつもりが、預貯金だけでは遺留分に届かない、ということが起こります。分け方を決める前に、それぞれの評価額を出しておくことをおすすめします(世田谷の土地はいくらか)。
付言事項
法的な力はありませんが、なぜこの分け方にしたのかを書き添えておくことはできます。実務では、ここが揉めるか揉めないかを分けることがあります。
書き換えは、いつでもできる
遺言はいつでも撤回でき、内容の違う新しい遺言を書けば、抵触する部分については古いほうが撤回されたものとみなされます(民法1023条1項)。一度書いたら変えられない、ということはありません。
一方で、認知症などで判断能力が失われたあとは書けません。 遺言も、家の売却も、そこから先は成年後見の手続きを通すことになり、時間がかかります。「まだ早い」と思えるうちが、いちばん選択肢の多い時期です。
中身を決めるには、先に評価を
遺言の中身を決めるには、何がいくらなのかが先です。世田谷の土地は路線価と実勢価格の差が出やすく、固定資産税の通知書の金額だけで判断すると、実際の分け方と噛み合わなくなります。
分け方そのものに迷いがあるときは、実家を兄弟で分ける3つの方法もあわせてご覧ください。名義変更の期限については相続登記の義務化にまとめています。
なお、この記事は制度の概要を整理したものです。個別の判断は、司法書士・弁護士・税理士などの専門家にご確認ください。 BATONは世田谷で30年、売却と相続にともなうご相談を受けてきました。不動産をどう分けるかの部分だけでも、お気軽にご相談ください。
この記事は株式会社BATONが作成しています。個別のご事情については、お問い合わせフォームまたはLINEからお気軽にご相談ください。