認知症の親の家は売れるのか。世田谷で施設費用のために自宅を売る前に
親が施設に入り、その費用のために空いた自宅を売りたい。よくあるご相談ですが、判断能力が失われた後は家族でも売れません。成年後見の手続きと家庭裁判所の許可、そして元気なうちにしかできない備えを整理しました。
「母が施設に入りました。空いた実家を売って、その費用に充てたいのですが」
世田谷でよくいただくご相談です。ご家族としては当然の考えですし、実家を空けたまま持ち続けるのは費用の面でも負担になります。
ところが、ご本人の判断能力が失われている場合、ご家族でも家を売ることはできません。 ここを知らないまま話が進み、契約の直前で止まってしまうことがあります。
以下は制度の概要です。個別の判断は、司法書士・弁護士などの専門家にご確認ください。
なぜ売れないのか
不動産の売買は契約です。契約をするには、**その意味を理解して判断する能力(意思能力)**が必要です。
意思能力を欠いた状態でされた契約は無効とされています(民法3条の2。2020年4月1日施行の改正で条文に明記されました)。認知症が進み、売買の意味を理解できない状態のご本人が署名しても、その契約は後から無効になり得ます。
「子どもが代わりにサインする」こともできません。 親名義の不動産について、子には当然に代理権があるわけではないからです。委任状も、ご本人に判断能力がなければ有効に作れません。
司法書士は決済の場で本人の意思を確認します。 ここで確認が取れなければ、登記は通りません。
成年後見という道
判断能力が失われた後にできるのは、法定後見の申立てです。家庭裁判所に申し立て、選任された成年後見人がご本人に代わって財産を管理します。
居住用不動産の処分には、裁判所の許可が要ります
ここが核心です。 成年後見人が選ばれても、それだけで自宅を売れるわけではありません。
成年後見人がご本人の居住用の不動産を売却・賃貸・抵当権設定するには、家庭裁判所の許可が必要です(民法859条の3)。住まいは本人の生活の基盤なので、後見人の一存では動かせないことになっています。
許可を得るには、売る必要性(施設費用や医療費に充てるなど)と、価格の妥当性を裁判所に示すことになります。「相場より安く親族へ売る」といった処分は、まず通りません。
時間がかかります
申立てから後見人の選任まで、数か月を見ておく必要があります。そこからさらに売却の許可、買主探し、契約、決済と続きます。
「来月までに現金が要る」という状況には、まず間に合いません。 施設の入所が決まってから動き出すのでは遅い、というのが実際のところです。
始めたら、途中でやめられません
成年後見は、家を売るためだけの一時的な手続きではありません。 ご本人の判断能力が回復するか、亡くなるまで続きます。
- 親族が後見人に選ばれるとは限りません(弁護士・司法書士などの専門職が選ばれることがあります)
- 専門職が就いた場合、報酬が毎年かかります
- 財産の管理について、家庭裁判所への報告が続きます
ご本人の財産を守るための制度なので、家族の都合で自由に使える仕組みではありません。ここは正直にお伝えしています。
元気なうちにしか、できないこと
判断能力があるうちであれば、選択肢はずっと広くなります。
任意後見契約
将来に備えて、あらかじめ自分で後見人を選んでおく契約です(任意後見契約に関する法律)。公正証書で作ります。誰に任せるか、何を任せるかを、ご本人が決められます。
家族信託(民事信託)
不動産の管理・処分の権限を、あらかじめ信頼できる家族へ託しておく方法です。受託者の判断で売却できるように設計しておけば、後見の手続きを経ずに動けます。
ただし設計の自由度が高いぶん、組み方を誤ると使えません。 費用もかかります。元気なうちにしか組めないという点は、任意後見と同じです。
売却そのものを先に済ませる
住み替えを考えているなら、判断能力があるうちに売っておくのが、いちばん単純です。
世田谷の戸建てにお住まいで、お子さんが独立され、ご夫婦だけで広い家を維持されている。この段階でのご相談がいちばん選択肢が多いと、私たちは実感しています。
世田谷での現実的な話
区内は持ち家の戸建てが多く、建物は古く、土地の評価は高いという組み合わせになりがちです。売れば施設の費用をまかなえる資産があるのに、手続きの問題で動かせない、という状態が起こりやすい地域だと言えます。
成年後見については、世田谷区の社会福祉協議会が相談の窓口を設けています。まずはそちらで制度の話を聞かれるのも良いと思います。
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BATONは世田谷で30年、こうしたご相談を受けてきました。「まだ売ると決めたわけではない」段階のご相談こそ、お早めに。
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