名義が祖父のままの世田谷の土地。数次相続をほどく順番
「実家の土地が、いまだに祖父名義になっている」というご相談は珍しくありません。相続が重なると相続人は十数人に増えます。戸籍をどこまで遡るのか、中間の登記は省けるのか、義務化された3年の期限にどう間に合わせるかを整理しました。
「実家の土地を調べたら、いまだに祖父の名義のままだった」
世田谷でご相談をいただくとき、これは珍しい話ではありません。相続登記に期限がなかった時代が長く続いたため、名義を変えないまま次の世代へ渡ってきた不動産が、区内にもかなりの数あります。
相続が重なった状態を数次相続といいます。ここでは、ほどく順番を整理します。登記と税の個別の判断は、司法書士・税理士へご確認ください。
放置していると、何が起きるか
相続人が、一代ごとに増えます
祖父が亡くなったとき、相続人が3人だったとします。その3人のうちの誰かが亡くなれば、その持分はさらにその配偶者と子へ移ります。
これが二代、三代と続くと、権利者は十数人になります。 面識のない親族、連絡先の分からない親族が含まれてくるのが普通です。
時間が経つほど、確実に重くなります。 今日がいちばん軽い日です。
売れません、貸せません、担保にも入れられません
名義が故人のままの不動産は、売却も、建て替えのための融資も、担保設定もできません。 買主が決まっても引き渡せません。
「いつか売るときに考えよう」は成り立ちません。いざ売るときになってから、権利者を十数人集めるところから始めることになります。
相続登記は、義務になりました
2024年4月1日施行の改正で、相続登記は義務になっています(不動産登記法76条の2)。不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます。
重要なのは、2024年3月31日以前に発生した相続も対象になることです。祖父名義のまま何十年も経っている土地も、例外ではありません。この場合の期限は2027年3月31日です(相続登記の義務化)。
ほどく順番
1. 登記事項証明書を取る
まず、現在の名義が誰になっているかを正確に確かめます。法務局の窓口かオンラインで取得できます。「祖父名義だと思っていたら、曽祖父だった」ということもあります。
2. 戸籍を集める
亡くなった方それぞれについて、出生から死亡までの戸籍を集めます。数次相続では、これを何人分も行うことになります。
本籍地が移っていれば、その分だけ各自治体へ請求します。ここがいちばん時間のかかる工程で、数か月かかることも珍しくありません。
2024年3月1日からは、最寄りの市区町村の窓口で、本籍地以外の戸籍もまとめて請求できる制度(広域交付)が始まっています。以前より負担は軽くなりました。
3. 法定相続情報一覧図を作る
集めた戸籍をもとに、法務局で法定相続情報一覧図を作っておきます(2017年5月29日開始)。これがあると、銀行・法務局・税務署へ戸籍の束を出し直さずに済みます。数次相続では、この効果が大きく効きます。
4. 遺産分割協議
権利者全員で、誰が取得するかを決めます。ひとりでも欠けると成立しません。
行方の分からない相続人がいる場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる、あるいは要件を満たせば失踪宣告を申し立てる、という道があります。いずれも時間がかかります。
5. 登記
数次相続では、中間の相続人が1人だけだった場合など、一定の条件を満たせば、中間の登記を省いて現在の権利者へ直接移せることがあります。登録免許税と手間が変わりますので、登記を出す前に司法書士にご相談ください。
間に合わないときは、相続人申告登記
分割協議がまとまらないまま3年が近づくこともあります。その場合は、相続人申告登記(不動産登記法76条の3)という手続きがあります。
「自分は相続人のひとりである」と法務局へ申し出るだけの簡単な手続きで、申し出た人については登記の義務を果たしたことになります。
ただしこれは所有権の登記ではありません。 売却も担保設定もできません。期限を止めるための手当てであって、解決ではないと考えてください。
世田谷の土地なら、まず売却を考えられます
近年、引き取り手のない土地について相続土地国庫帰属制度(2023年4月27日施行)が始まりました。ただしこれは、山林や地方の農地など売るに売れない土地を想定した仕組みです。
世田谷区の宅地であれば、買い手がつかないということはまずありません。 権利関係さえほどければ、換価分割で分けるという道が現実的に取れます(実家を兄弟で分ける)。
つまり、この一帯の数次相続は「ほどけば片づく」問題です。 手をつけるのが早いほど、関わる人数も費用も少なくて済みます。
手続き全体の期限は相続の期限と手続きの順番にまとめました。BATONは世田谷で30年、こうしたご相談を受けてきました。まず現状を調べるところからで構いません。
この記事は株式会社BATONが作成しています。個別のご事情については、お問い合わせフォームまたはLINEからお気軽にご相談ください。