世田谷の実家が空き家になったら。放置の費用と、売る・貸すの選び方
誰も住んでいない実家は、置いておくだけで費用がかかります。固定資産税、管理の手間、そして2023年の法改正で税の特例から外れる可能性。世田谷で空き家を抱えた方に向けて、売る・貸す・使うの選び方を整理しました。

世田谷区でも、誰も住んでいない実家はめずらしくありません。ご相談で多いのは「片付けが終わらないうちに何年も経ってしまった」というお話です。空き家は、置いておくだけで費用がかかり、時間とともに選べる道が減っていきます。 何にいくらかかるのか、そして売る・貸す・使うをどう選ぶのかを整理します(買取と仲介の比べ方)。
空き家は全国で約900万戸。他人事ではない数字です
総務省の住宅・土地統計調査(令和5年=2023年調査)によると、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%で、いずれも過去最高でした。このうち、賃貸用・売却用・別荘などを除いた、いわゆる使い道が決まっていない空き家は約385万戸です。
東京都の空き家率は全国平均より低いものの、世田谷区のように住宅が密集した地域では、1軒の空き家が近隣に与える影響が大きいという別の問題があります。
放置している間にかかり続けるお金
まず、費用の話から見ていきます。誰も住んでいなくても、次のものは毎年出ていきます。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 世田谷区の一戸建てで年10万〜30万円台になることも |
| 火災保険 | 空き家は保険料が上がる、または加入できないことがある |
| 電気・水道の基本料金 | 換気や清掃のために止められないことが多い |
| 庭木の剪定・草刈り | 年1〜2回で数万円 |
| 管理の交通費・手間 | 遠方にお住まいなら往復のたびに |
建物を壊して更地にすると、固定資産税は上がります。 住宅が建っている土地には住宅用地特例があり、200平方メートルまでの部分は固定資産税の課税標準が6分の1になるためです(地方税法第349条の3の2)。「解体すると税金が上がるから、そのままにしている」という判断は、ここから来ています。
ところが、放置していても特例が外れることがあります
2023年12月13日に施行された改正空家等対策特別措置法で、**「管理不全空家等」**という区分が新しく設けられました。
- 管理不全空家等……そのまま放置すれば特定空家等になるおそれのある状態。市区町村から指導を受け、改善されずに勧告に至ると、住宅用地特例から外れます
- 特定空家等……倒壊のおそれ、著しく衛生上有害、景観を著しく損なうなどの状態。勧告で特例が外れ、さらに命令・行政代執行(解体費用は所有者負担)へ進むことがあります
窓が割れたまま、庭木が道路にはみ出している、ゴミが放置されている——といった状態が続くと該当し得ます。「壊さなければ税金は安いまま」は、もう成り立ちません。
費用より重いのは、近隣への責任です
世田谷区は隣家との距離が近い地域です。空き家が倒壊したり、屋根材や塀が落ちて人にけがをさせたりした場合、所有者は土地工作物責任(民法第717条)を問われることがあります。
不法投棄、放火、不審者の出入りといった防犯上の問題も、実際に起きています。近所付き合いのある土地で、これがいちばん重いというのが、ご相談を受けていての実感です。
売る・貸す・使う。3つの道の選び方
活用の方向は大きく3つです。どれが正解かは、目的によって変わります。
1. 貸す(安定した収入がほしい場合)
リフォームして賃貸に出す方法です。人が住むことで建物の傷みが止まり、将来売る選択肢も残ります。
コツは全部をきれいにしないことです。水回りと内装を最低限整えるだけで借り手が見つかることは多く、立地がよければフルリノベーションは要りません。一方で、初期費用と空室のリスクは残ります。
2. 売る(手間と不安をなくしたい場合)
管理する予定がないなら、早めに売ることも立派な活用です。建物は古くなるほど価値が下がり、修繕費は増え、上に書いた指定のリスクも上がっていきます。
「売れない家」はほとんどありません。売り方が合っていないだけであることが大半です。仲介・買取・古家付きのまま・更地渡しと、出し方によって手取りは変わります。
3. 事業に使う(収益を最大にしたい場合)
店舗、事務所、簡易宿所など。うまくいけば収益は大きい一方、用途地域や消防・建築基準の確認が必須で、上級者向けです。世田谷区は第一種低層住居専用地域が広く、そもそも建てられない用途があります。
「知り合いが借りたいと言っている」という始まり方は要注意です。用途・契約期間・修繕の負担を曖昧にすると、後で必ず揉めます。
相続した空き家なら、先に確認しておきたい2つ
ひとつめは名義です。 相続登記は2024年4月1日から義務になりました(不動産登記法第76条の2)。名義が故人のままだと、買主が決まっても引き渡しができません(相続登記の義務化について)。
ふたつめは税の特例です。 相続した空き家を売る場合、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」(租税特別措置法第35条第3項)があります。昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、など要件が細かく、適用期限も定められています。
使えるかどうかで手取りが大きく変わります。判断は個別の事情によりますので、必ず税理士にご確認ください。
なお、相続した土地を国へ引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度(2023年4月27日施行)もありますが、建物が建っていると対象外です。解体費用と手数料を考えると、世田谷区では売却のほうが現実的なことがほとんどです。
迷ったら、3つとも見積もってから決める
いちばんもったいないのは、比べないまま何年も置いてしまうことです。
BATONでは、売った場合の手取り・貸した場合の収支・持ち続けた場合の年間費用を、同じ紙の上で比べられる形にしてお出ししています。代表は2級FP技能士で、この試算に別途費用はいただきません。
家財が残ったままでも構いません。遺品整理や不用品の処分から手配できます。「まだ何も決めていない」段階でご相談ください。相続・空き家のご相談についてもご覧ください。
この記事は2026年8月時点の制度の概要です。税や登記の個別の判断は、必ず税理士・司法書士等の専門家にご確認ください。
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